漆喰の外壁は100年以上の寿命があると聞くものの、経年による外壁の汚れが目立ってきて悩んでいる方も多いのではないでしょうか。漆喰の汚れの範囲が小さく軽度であれば、スポンジやサンドペーパーで汚れを落とすことが可能です。しかし、汚れが広範囲でひび割れを伴っている場合は、専門業者による補修が必要なこともあります。本記事では、漆喰の外壁汚れの落とし方や、汚れを防ぐ対策について解説していますので、漆喰を長持ちさせるための知識として把握しておきましょう。
漆喰の外壁に付いた汚れを落とす方法
漆喰の外壁に付いた汚れを落とし定期的にメンテナンスを行うことで、清潔で美しい外観を保てます。
汚れの種類に応じた落とし方は、次の3つです。
● 軽い汚れ:消しゴム・メラミンスポンジ
● 油性の汚れ:サンドペーパー
● 黒カビ:塩素系漂白剤
以下より一つずつ解説していきます。
軽い汚れ:消しゴム・メラミンスポンジ
漆喰の外壁に付いた軽い汚れであれば、消しゴムやメラミンスポンジで落とせます。
軽い汚れの代表例は、次の通りです。
● 手あか
● 雨による水あか
● 砂やほこりの付着物
まずは、消しゴムで文字を消すようにして汚れを落とし、落ちない場合は水を含ませたメラミンスポンジでこすり洗いをしましょう。
メラミンスポンジは、メラミンフォームと呼ばれる網目状の硬い材質でできており、水を使ってこすり洗いすることで汚れを落とします。
こすっても落ちないような頑固な汚れの場合は、こすりすぎると汚れを広げてしまう恐れがあるため、まずは小さい範囲で試してみましょう。
消しゴムやメラミンスポンジは、雑貨店や100円ショップで購入可能です。
油性の汚れ:サンドペーパー
消しゴムやメラミンスポンジで落ちない油性の汚れの場合は、サンドペーパーを使って落としてみましょう。
油性の汚れの代表例は、次のようなものがあります。
● 換気口付近の油汚れ
● 油性ペンキや塗料
● 自動車の排気ガス
油性の汚れは水あかと違って表面に付着しているだけではなくて、漆喰の奥まで染み込んでいる場合があり、サンドペーパーで削らないと汚れが落ちません。
サンドペーパーは広い範囲の汚れにも効果的ですが、漆喰の外観を損なわないために、強く削り過ぎないように注意が必要です。
使用するサンドペーパーの種類は150〜300番の中目程度を目安にして、ご自宅の壁に適したものを選択しましょう。
黒カビ:塩素系漂白剤
水洗いで落ちない黒カビには、塩素系漂白剤を使うことで除去が可能です。
実際に黒カビの汚れを落とす手順は、次の通りです。
1. 塩素系漂白剤を黒カビ部分に塗布する
2. キッチンペーパーを密着させ漂白剤を再度塗布する
3. そのまま5〜10分間放置する
4. キッチンペーパーを撤去する
5. 黒カビ部分に水をかけブラシでこする
除去効果を大きくするために、キッチンペーパーを使って漂白剤が垂れ落ちないように留めておくことが効果的です。
また、泡タイプの漂白剤を使用しても同じような効果が得られます。
漆喰は、石灰にのりや粘土を混ぜ合わせた材質でアルカリ性のため、酸性の洗剤は使用しないように注意が必要です。
漂白剤を使用する際は、マスクやゴム手袋などを装着して直接手で触れないようにしましょう。
漆喰の外壁に汚れが付く3つの原因
漆喰の外壁に汚れが付く主な原因は、次の3つです。
● 排気ガスやホコリが多い環境である。
● 海や川が近くて湿気が多い。
● 門袖は地面からの湿気の影響を受けやすい。
汚れが付く原因は、立地環境の他にも自動車の排気ガスや天候などの外的な要因も含まれます。
以下より詳しく解説していきます。
排気ガスやホコリが多い環境である
漆喰の外壁に汚れが付く原因の一つは、排気ガスやホコリが多い立地環境であることです。
車の通りが多く、周囲に工場や道路が密集している環境では、大気中に浮遊している微粒子や排気ガスが外壁に付着しやすくなります。
漆喰の外壁は、多数の小さな穴が空いた多孔質の材質であるため、ホコリや砂などが吸着しやすく壁の内部に入って汚れが蓄積されます。
排気ガスやホコリが多い環境の場合は、漆喰の表面に撥水コーティングをして飛来物の付着を防ぐことで、外壁汚れの防止が可能です。
海や川が近くて湿気が多い
住宅の周りに海や川がある場合、湿気が多い環境になるため、漆喰の外壁に汚れがつきやすい傾向です。
湿気の多い地域は、大気中に含まれる水分が漆喰の外壁に吸収され蓄積し、時間が経過することでカビや藻が発生します。
特に住宅の北面は日光が当たらず、湿気がたまり汚れも目立ちやすいです。
また海沿いの地域では、潮風や海水の塩分が外壁に付着することも、漆喰が汚れる要因の一つとして考えられます。
湿気が多い環境の住宅の場合は、漆喰の表面を水や中性洗剤で洗浄する定期的なメンテナンスをして、汚れの蓄積を予防しましょう。
門袖は地面からの湿気の影響を受けやすい
門袖は地面から上昇する湿気の影響を受けやすく、雨水の汚れやカビの原因になります。
特に雨や雪が多い地域では日照時間が短く、水たまりや積雪など地面からの湿気の影響をより受けやすい傾向です。
住宅本体の場合は、基礎のコンクリート部分の上に外壁があり、漆喰部分と地面とが切り離されています。
しかし門袖の場合は、漆喰部分が直接地面に接しているため、雨による地面からの跳ね返りや湿気の影響で汚れがつきやすくなります。
門袖の汚れを防ぐためには、周囲の通気性をよくすることや、水はけのよい地面にするなどの対策が有効です。
漆喰の外壁汚れを防ぐ3つの対策
漆喰の外壁汚れを防ぐ対策は、次の3つが挙げられます。
● 浸透型の撥水剤でコーティングする
● 軒先の出を大きくする
● 玄関や窓にひさしを付ける
漆喰の汚れを防止するためには、定期的なメンテナンスも大切ですが、雨や風を受けにくい構造にすることも、漆喰の外壁を守る一つの方法です。
以下より一つずつ解説していきます。
浸透型の撥水剤でコーティングする
漆喰の外壁を汚れから守るための対策の一つは、浸透型の撥水剤で漆喰の表面をコーティングする方法です。
浸透型の撥水剤は、漆喰の内部まで浸透して防水層を作り、キーワード表面に撥水効果を与え雨水の浸入を防いでくれます。
漆喰の内部に水分が留まらないことから、漆喰表面の乾燥するスピードが早くなり、水あかの付着やカビの発生を防止できます。
なお、コーティングをしても水蒸気は通過するため、漆喰の呼吸する性質は失われません。
コーティング材はハケやローラーで施工でき、漆喰本来の見た目も損なわないため安心して使用できます。
軒先の出を大きくする
リフォームと合わせて漆喰の外壁にしたいと望んでいる方は、外壁の汚れを防止するために、軒先の出を大きくすることも検討しましょう。
軒先とは、外壁から外側に突き出ている屋根の部分のことをいい、窓や外壁に雨が直接かかることを防いでくれます。
軒先の出を大きくすることで、雨水が漆喰部分にかかる頻度をより少なくでき、漆喰の乾燥した状態を保てることから、水あかやカビの汚れ防止につながります。
軒先の出を考慮したデザインへのリフォームは、漆喰のメンテナンスも簡素化でき、美しい外観を長期間保つための重要なポイントです。
玄関や窓にひさしを付ける
玄関や窓にひさしを付けることも、漆喰の外壁を汚れから守る対策の一つです。
ひさしとは、主に玄関や窓の上部に付いている部分のことを指し、日差しの抑制や雨風の飛来を防ぐ効果があります。
外壁に汚れが付く原因は、窓のサッシにたまったホコリや砂が雨で流され、外壁をつたって流れ落ちるためです。
ひさしを付けることで、ホコリが蓄積しやすいサッシ部分への雨風を防げることから、外壁の汚れる頻度を軽減してくれます。
また、ひさしがない住宅の場合でも、後からひさしだけ取り付けることが可能なため、漆喰の外壁の汚れが気になる方は検討してみてください。
漆喰の外壁のメリット・デメリット
漆喰の外壁は、カビが発生しにくいメリットがある一方で、汚れや傷がつきやすいデメリットもあります。
メリットとデメリットをそれぞれ一つずつご紹介します。
メリット:調湿効果でカビが発生しにくい
漆喰の外壁は調湿効果に優れており、カビの発生を抑えるメリットがあります。
漆喰は表面に多数の小さな穴が空いているため、雨が多い時期は湿気を吸い取り、乾燥した時期は湿気を吐き出して、湿度のコントロールが可能です。
したがって、湿度を快適な状態に保つ性質があることから、カビが発生しにくい湿度環境を作り、清潔な状態を維持してくれます。
漆喰にカビが発生した場合でも、漂白剤を使用すれば簡単に落とせるため、メンテナンスのしやすさも魅力の一つです。
デメリット:汚れが目立ち傷が付きやすい
漆喰のデメリットは、汚れが目立つ上にひび割れや傷が付きやすいことです。
漆喰の色は一般的に白色であるため、砂が混じった水あかや植物の付着物など、色の付いた汚れが目立ちます。
また、漆喰の素材は石灰で作られていることから、硬いものをぶつけたり地震によるひび割れができたりなど、傷が付きやすい点も注意が必要です。
しかし、前述した対策を行えば漆喰の汚れは付きにくくなり、傷が付いてしまった場合でも補修してメンテナンスができます。
漆喰の外壁はどのくらいの耐用年数?
漆喰の外壁は、100年を超える耐用年数といわれています。
漆喰は、二酸化炭素を吸収して硬化する性質を持っており、時間の経過とともに頑丈になります。
実際に城や蔵など、歴史的な建造物の外壁に漆喰が使われているケースが多いことからも、漆喰の頑丈さがうかがえるでしょう。
ただし、漆喰のよい状態を維持するためには、定期的な点検や掃除、補修が必要でメンテナンスフリーではありません。
漆喰以外の外壁でも、コンクリートや板張りなど100年近い耐用年数のものもあります。
外壁を漆喰にした事例を3つご紹介
実際に、当サービス『リショップナビ』の加盟会社が施工した、漆喰の外壁施工した事例を3つご紹介します。
● 築100年の古民家をリノベーション
● 経年劣化で剝がれた漆喰を改修
● 築100年以上の蔵の漆喰壁を補修
漆喰の外壁への塗り替えや補修を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
事例1:築100年の古民家をリノベーション
住宅の種類 |
一戸建て |
築年数 |
100年 |
施工日数 |
120日間 |
リフォーム費用 |
- |
築100年を超える古民家で、夏の暑さと冬の寒さが厳しいため、外観から家の内部までリフォームを行いました。
大改修にはなりましたが、以前にも増して重厚な外観となり、漆喰の調湿性能を活かして快適な生活が期待できます。
事例2:経年劣化で剝がれた漆喰を改修
住宅の種類 |
一戸建て |
築年数 |
45年 |
施工日数 |
10日間 |
リフォーム費用 |
約60万円 |
人通りが多い道路に面しているため、漆喰の外壁をきれいにして見た目をよくしたいとリフォームを検討しました。
漆喰が傷んでいるところだけではなく、全体的な下地の補修から丁寧に施工を進め、漆喰の質感を出す美しい仕上がりになりました。
事例3:築100年以上の蔵の漆喰壁を補修
住宅の種類 |
その他 |
築年数 |
100年 |
施工日数 |
10日間 |
リフォーム費用 |
約38万円 |
築100年以上ある蔵において、漆喰の外壁を補修しました。
重量感がある瓦と白壁の漆喰のインパクトを残すために、部分的に外壁を金属で施工しましたが、違和感のない仕上がりになりました。
漆喰の外壁汚れを落としてメンテナンスしよう
漆喰の外壁に付いた汚れの落とし方は、汚れの種類によって異なります。
● 軽い汚れ:消しゴム・メラミンスポンジ
● 油性の汚れ:サンドペーパー
● 黒カビ:塩素系漂白剤
漆喰の質感やよい状態を長く保つためには、漆喰の表面に撥水材のコーティングをすることや、雨風を防ぐひさしの取り付けなどの対策が効果的です。
漆喰の状態をいち早く確認するために、定期的な点検やメンテナンスをするように心がけましょう。
また、漆喰を施工してから年数が経過していると、ひび割れや剥れなどの損傷が出てくる場合もあるため、塗り替えによるリフォームも検討してみてください。